読書8‐12『生き方の不平等』Ⅷ

本書の副題が「お互いさまの社会にむけて」である。

~少子高齢社会の中でいまもっとも必要とされているのは、社会的連帯です。もっとわかりやすくいうと、「お互いさま」の社会の形成なのです。~

「困ったときはお互いさま」と使えばしっくり来る。「お互いさま」という言葉を聞くと思い出す。昔、尊敬していた(今はしていない)職場の先輩が、ある仕事に文句をつけてやらなかった人に、「そんなのお互いさまだろ」と行ったのだ。その先輩は、まさに清濁併せ呑む器量の深さや徳を持った人だった。ああ、やはりこの人の口から出るにふさわしいと思った。逆に言うと、私の長い人生の中で、「お互いさま」という言葉は出現していないのだ。

~お互いさまというのは利害関係を短期的に見ないで、長いスパンの中でお互いの利益をとらえることです。短期的な利害を超えて共に豊かな社会への連帯を形成することです。~

必要なのは社会的連帯。おそらく高度経済成長の余韻が残っていたころまで一億総中流社会だった。みんなが中流なら、連帯意識も高く、お互いさまの素地ができている。そこから年月が経ち、いまや格差社会。人と人とのつながりがあれば、助けてやろうとも思えるのだが、そうではない。ついリターンを気にしてしまう。この格差時代にどう「お互いさま」を育てていくのだろう。(R5.9/21記)