読書『 人間であること』Ⅱ

性欲、食欲、集団欲というと人間よりも動物を連想させるのだが。

~性欲にしても食欲にしても、それらの本能行動を共にすることは、お互いの心をこよなく融合させる。理屈抜きで心の融合をするために、性行動はいうに及ばず、食行動を共にする手を使っている。「同じ釜の飯」を食べることで、自己超越によって集団へ帰属する心をいやがうえにも高ぶらしている。~

現在、感染症対策として、給食を食べる際、お互い向かい合わず、全員前を向いて食べている。心の融合という点では、その機会を逃す残念な結果である。

大脳辺縁系で生まれる集団欲は、私たちが「たくましく」生きてゆくために一番重要な本能なのである。集団欲が満たされたときに、一心同体の感じや心の連帯を覚え、心が安定するのであるが、そうでないときに淋しさや孤独をかこつようになって心が不安定になる。~

集団欲は「たくましく」生きるための一番重要な本能なのだ。しかし我々はややもすると子どもを自立させようと意識しすぎて、集団から引き離してしまいがちなのだ。一人で自立できていることにたくましさを感じてしまうのだ。「たくましく」生きるために集団欲を充たすこと。自分の感覚とは真逆なのだ。

~私たち人間は視覚や聴覚を介して心の安定を図っており、特に、言葉や文字を発明し、それを活用して、きめ細かい人間関係を作って集団欲を充たしているのである。~

集団欲を充たしてあげることが心の安定になる。私の教室の中で子どもたちの「一心同体」「心の連帯」を作ってあげられているだろうか。