読書7-7『日本の大転換』(中沢新一)

日本の大転換 (集英社新書) – 2011/8/17 中沢 新一  (著)

エネルギー問題についての著書である。『日本の~』と題してしまうと大げさな感じがするなあ。この年、東日本大震災が起き、大津波のために原子力発電所の事故も引き起こしてしまった。

核分裂反応を地上で持続させる原子炉は、それゆえ地球生態圏の外部の、太陽圏に属する現象だとみなすことができるだろう。~

原子力発電は生態圏内部の自然ではないのだから、それをあたかも自然の事物のように扱うことは許されない。いわんやそれが「絶対に安全である」ことなどはありえようがないのである。生態圏の自然と太陽圏の「自然」を混同することほど危険なことはない。~

生態圏とか太陽圏とかよく分からないが、原子力というもの自体が「神の領域」に踏み込んでいるような気がする。本当は、人間の手に負えないものなのだ。

~日本文明はエネルコロジー的に破綻しかかっている。がんばればなんとかなるというレベルはとうに超えてしまった。危機の本質を知りぬくことによって、文明の大転換を試みない限り、日本文明は衰退の道へと踏み込んでしまう。~

原発事故が起きてから、その反省に立ち、原発の稼働を停止し、クリーンエネルギーを求める気運が高まった。震災直後が「文明の大転換」を行うチャンスだったのかも知れない。が、そこから10年以上が経過した。ロシア、ウクライナの問題も関係しているのだろう、我が国の電気、ガスなど光熱費が値上がりし、発電どうこうよりも、電気そのものに対する不安が高まっている。著者の言うように、我が国の衰退は避けられないのだろうか。(R4.12/14記)