映画『のさりの島 (2020)』

のさりの島 (2020) 監督 山本起也

昨日まで旅行をしており、久しぶりの書き込みである。グランパスのチケット購入をした後、鑑賞を思い立ち、ミニシアターに向かう。

「のさり」とは「すべて受け入れる」ような意味。「オレオレ詐欺」の青年と被害者の老人との心温まる物語を想像していたが、全くそうではなかった。いろいろと考えさせられる作品である。

少し前だが、サッカー観戦のため四国のある市に立ち入った。そこはまさにシャッター街であった。今回の舞台は天草。それとほとんど同じ状況であった。ヒロインはラジオのDJ。街の活気を取り戻そうとしている。

心に刺さったところをいくつか話したい。主人公が楽器屋を営む老婆の家の2階の片づけを終える。他にやることがないか問うのだが、もう何もない。そして映画館を手伝う若者に、今度の映画はブルーレイだから、という店主。

要するに「やることがない」のだ。若者が街を捨てたと思いがちだが、違う。街が(時代が)若者を捨てたのだ。では街はどうか。「今は、みんな買い物はインターネットでしょ」という事務長さん。そう、街は、購買層から捨てられたのだ。

しかし、ここは「のさりの島」。だから人々はその状況を受け入れている。それでも一人、受け入れなかったのがヒロインである。孫になりかわった青年の正体をあばこうとする。街に残り、街を愛している彼女が、「のさり」を理解していなかったという皮肉なのだ。ハープの少女とうまく対比させている。

感動はないけど、いろんな解釈ができる、そういう楽しみのある作品です。(R3.7.24記)