映画『ファーザー (2020)』

ファーザー (2020) THE FATHER 監督 フロリアン・ゼレール

高評価なのでいつか観てやろうと思っていた作品。年休を取り、1時間早く仕事を切り上げ、市内の映画館へ自転車で向かった。私は評価点4点以上だったら、感動作だと期待する。だが、そうではなかった。

主人公アンソニー認知症を患う物語である。患った本人にとって認知症がどういうものであるか、その症状がよく分かるような作りになっている。序盤、アンソニーの語りが長い。それがどことなく単調で、寝落ちしかけてしまった。

本人の視点で物語が進んでいくので、それが認知症によるものなのか、現実なのか、というのがはっきりしないところもある。わかったようなわからないような流れなのだが、認知症は確実に進んでいることだけはわかる。

私の母は認知症であった。一人暮らしであったが、いろんな心配事が出てきた。施設が見つかった時はホッとした記憶がある。認知症が進行するにつれてお見舞いの回数は確実に減っていくものだ。見舞っても自分が分かってもらえないというのはやはりつらいものだ。その人がその人でなくなっていく病だ。母を失ったとき、大きな悲しみはなかった。

「自分を振り返る機会となる」、これも映画の魅力だ。母に対する自分の態度はどうであったか。患う前の元気だった母、病が進んでいく母。作中の家族もよく口にしていた。「何と言えばいいのだろう」まさにその心境だ。そして自分もそうなるのだと覚悟しておかなくてはならない。(R3.6.21記)