映画『ブータン 山の教室』

ブータン 山の教室 (2019) LUNANA: A YAK IN THE CLASSROOM 監督 パオ・チョニン・ドルジ

みどりの日政令指定都市に乗り込み、最も高評価の作品を選んだ。ブータンは幸福度ナンバーワンの国だそうだ。教職にやる気をなくしていた主人公が、なんと8日間、バスと徒歩で行き着いた田舎のルナナ村で、教師の情熱を取り戻していくという物語だ。私も教職なので、関心がないわけではなかった。

本作は、感動は強くないが、考えさせられる作品だ。

その村では何もない。電気がほとんどない。紙がない。何もない。だが貧しいかといえばそうではない。まったく不幸そうに見えない。いやこれこそが幸せの国たる所以だ。翻って我々はどうか。豊かさを求めて資本主義社会、自由主義社会を邁進してきた。ブータンが幸せの国だとしたら、我々は不幸に向けて突き進んでいるということだ。

もう一つ。村長は、主人公に言った。「先生、あなたは子どもたちの希望だ」と。では不幸な国の教師である私は子どもたちの何だろうか。「絶望」でしかない。子どもに役立つか分からない知識を詰め込み、スケジュールや規則で縛り、無理に競わせて夢や可能性を潰している。この国は教育を経済の道具としか考えていないのだ。

そんな状況で私もしばらくは働くのだろう。絶望の教師として。