読書『 人間であること』Ⅸ

気になる表現に引き寄せられた。

大脳辺縁系のいちばん基本的な本能である集団欲は私たちを集団の結束にかりたてている。新皮質系のシンボルである前頭連合野は皮肉にも私たちを限りない競争意識にかりたて、他を否定し、相手を抹殺するという「殺し屋」の血潮を私たちの血管の中にたぎらせている。~

人間は集団を求めながらも、他を否定し相手を抹殺しようとしている、個々の中にも相反する習性を持っているということか。「人間」が生き延びるためには集団を形成することも競争して他を蹴落とすことも必要なのだ。

~「たくましく」生きてゆくために集団生活を営みながら、その中で「よく」生きてゆくためにお互いが個を主張し、他を否定しようとしている、人間の宿命としての集団と個の対立である。~

ここのところ世界は互いに手と手を結び合うよりも自国第一主義新自由主義が高まる一方である。どうやら前頭連合野の発達に偏っているようだ。

~私たち人間は矛盾に満ちた理屈で割り切ることのできない精神によってお互いに対立し、対決するように振る舞わされているこよなく非合理的な存在者である。これが私たち「人間である姿」なのである。そして私たちが人間になろうとするほど存在者としての非合理性はますます高まっていく。~

人間自体が矛盾に満ちた存在だということだ。相反するものを抱えていてこそ人間なのだ。前頭連合野が持ち得るものを抑えるか、それとも良い方向に変えるのか。それはまた次回にしたい。