読書『君たちはどう生きるか』(吉野源三郎)

君たちはどう生きるか (ポプラポケット文庫 日本の名作) 単行本 – 2011/8/6
吉野源三郎 (著)

しばらく前、この本の「コミック版」が発売された。男の子の形相が大きく描かれているものだ。ちょっとしたブームになっていたと思うが気にも留めなかった。

その後、大手中古書店でこの単行本を発見、購入。名著だと思う。

主人公は中学生。はやくに父親を亡くしている。そんな彼を「おじさん」が指南する。

主人公の年齢からして、おじさんも40代前後と類推する。きっと著者はこのおじさんに自分を投影していると思われるが、このおじさんが本当に賢い。豊富な知識、広い見識で主人公を導いているのだ。

~いつでも自分がほんとうに感じたことや、真実、心を動かされたことから出発して、その意味を考えていくことだと思う。君が何かしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもごまかしてはいけない。そうして、どういうばあいに、どういうことについて、どんな感じを受けたか、それをよく考えてみるのだ。そうすると、あるとき、あるところで、君がある感動をうけたという、くりかえすことのない、ただ一度の経験の中に、そのときだけにとどまらない意味のあることがわかってくる。それが、ほんとうの君の思想というものだ。~

「思想」なんて言葉、使うことがあるだろうか。そんな崇高な言葉を、中学生にもわかるように落とし込んで伝えている。自分自身の生活を振り返って「思想」がないということが恥ずかしい。

~肝心なことは、世間の目よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当の君の塊で知ることだ。そうして、心の底から立派な人間になりたいという気持ちを起こすことだ。…君がいいと判断したことをやっていくときにも、いつでも、君の胸からわき出てくる、いきいきとした感情につらぬかれていなくてはいけない。~

人間の立派さを自身で知れ。立派になりたいという気持ちを起こせ。

かえって自分は立派さを感じるアンテナさえ錆びついている。ましてや、いきいきとした感情も。