読書『日本人が知らない幸福』Ⅴ

 

この本も、もう終盤である。「夢」というものに対し、持論をぶつけている。

ーわたしは「夢を追いかける」という言葉を正直なところ嫌っている。自分に夢がない、という訳ではない。しかし夢があっても、早いうちから追いかけなかったことを今でも後悔していない。なぜなら追いかけない分の時間を、自分の本当の適性、自分の限界などを見極めることに使えたと思うからだ。ー

私も、仕事で挫折したからか、「夢」という言葉に嫌悪感を感じる。

ー成功した彼らの苦労は並大抵ではないはずだ。が、彼らの成功した要因は苦労もあるはずだろうが、それより大きいのは生まれつきの才能、そして運に恵まれたことだ。ー

こうやって、堂々と言ってくれると安心する。今はもう、仕事で自己実現しようとか、成功しようなんて思わない。仕事は、目的ではなく手段だ。

ーわたし自身は自分のことを根っから根性がない人間だと思っている。それゆえ、何回も夢をあきらめ、挫折を味わってきた。それが人生なのだと、心に傷を負いながら、人生の別の方向について考えた。でもそのおかげで四十過ぎまで生きて、時間をあまり無駄にしないで済んできたように思う。ー

筆者は、恵まれず、ずっと苦労してきたのだろう。だから現実を見据えることができるのではないか。それに対し、豊かな我々は夢見たものが何でも手に入ると錯覚してしまうのかもしれない。

ー「夢」という言葉は、たいていの場合は美化されることが多い。が、芸術の中の表現と現実を区別するのも一つの才能である。ー

そうそう理想を高くしない。がんばらなくていいのだ。