読書 『「こころ」の本質とは何か』(滝川一廣 ちくま新書 2004)前半

学校制度はその役割を終えている?
~『「こころ」の本質とは何か』(滝川一廣著 ちくま新書2004)を読んで~
 私は、教育書や学校関係の本よりも、教育とは違う分野の本の中の教育に関する文章を読むことに惹かれます。外の立場から、教育を客観的に見ていると感じるからです。精神医学を専門としている著者は、不登校がなぜなくならないのかを切り口に、学校教育の矛盾を論じています。
★学校は、夢や希望の場所だった
 著者は、かつての学校を取り巻く環境について「貧しく苦しい現状から少しでも豊かな未来へと自分たちを導いてくれるという夢を担った場所として、学校は一種の聖性、絶対性を民衆の側から自ずと賦与されたのです。」「勉強に励み、学歴の階梯を昇ればだれしもより豊かな生活をしうるという希望を人々は共有できていました。」と述べています。
教員もかつては「聖職」と言われていたそうです。今は、教師の権威などみじんもありません。また、高度経済成長以前の「学校」は、子どもに夢や希望を担った場所だったのです。しかし今、子どもを前にして夢や希望を語っている余裕など全くありません。

(後半に続く)