読書6-16『老いる覚悟 』Ⅲ

筆者はさすがに作家だけある。言葉の選び方がうまいし、すっと腹に落ちてくる。

~肉体的能力や精神能力が高い、社会に参加する、常に未来を見ている。これらを実践する覚悟があるかないかで大きな差が出るのである。~

体を鍛えよう。健康には気を遣おう。そして読書を続けよう。職場、組合、趣味サークルの活動に参加しよう。さらに、将来こんなことをしたい、こんなふうになりたい、社会をこう変えたいという希望を持とう。老いる覚悟とは、自分の心身が衰えることを覚悟するのではなく、老いを乗り越えるために努力する覚悟だということか。

~尊敬される高齢者はインターネットに載っていない情報を持っている。人生で培ってきた千軍万馬の経験や叡智がある。機械などでは手に入らない重要な情報を、高齢者の知恵が埋めてくれる。高齢者がいるだけで何となく社会や家庭が安定する。そういう老人にならなければいけない。~

「人生で培う」か。自分はともすれば経験や叡智を敢えて捨て去ってしまうところがある。いやな過去と一緒に。だが、そうではない、これからもきっと起こりうる困難や苦労は、貴重な経験、将来に生かされるべき叡智と変わるものなのだ。困難や苦労を味わう経験やそこで得た叡智は、いつか必要とされるのだ。「艱難汝を玉にす」とは、そういう意味ではなかろうか。(R4.7/12記)