映画『由宇子の天秤 (2020)』

由宇子の天秤 (2020)  A BALANCE  監督 春本雄二郎

座禅から帰り朝食を食べ、ネットで座席予約をしてすぐに隣市のミニシアターへ向かう。いつものように自転車で。休日はこのパターンが定例化しつつある。ジョギングを免除できる利点があるのだ。本映画は評価が高いから鑑賞。

ものすごい衝撃作だ。情報社会、監視社会、学歴社会、格差社会、日本が抱えているたくさんの社会問題を炙り出す。160分の長編だが長さは感じない。だが重い。

大きく前後半に分けられよう。前半は番組制作者のヒロインが事件を追い、ジャーナリズムの問題点をまざまざと見せつける。しかし後半からは予想だにしなかった展開となる。すべての問題が他人事に思えず、ハラハラしどうしだ。また、劇中では、「対比」表現が巧みに使われているので、注目ポイントだと思う。

観て強く感じたことは、我が国はもう決して豊かな国ではないのだが、それ以上に「やり直しできない社会」だということだ。その原因は同調圧力の強さによるものだ。そう考えると学校教育も一翼を担っていると言える。しかも学歴偏重社会も生み出しているから手に負えない。だが、だれもそれを正そうとしない。「こんなにいい点数とったの初めて」とのつぶやきが心にグサリと刺さった。

まさに生きづらい社会だ。だが、作り手は解決のヒントを与えてくれている。私は自転車での帰り道、それに気づいて、そして泣いてしまった。通り過ぎる人がいたら不審に思っただろうな。今、私にできることは、家人や娘や孫においしい料理を作ってもてなすことなのだとつくづく思った。観るのに覚悟がいるほどの衝撃作です。だけどおススメ!(R3.11/21記)