果たせぬ夢を父親から押し付けられた兄弟たちの物語
アイアンクロー 2024年4月5日公開-132分-ドラマ 監督 ショーン・ダーキン 制作国 アメリカ
次女から買った映画チケットの使用期限が迫っている。午前中に鑑賞できる作品を物色していたら本作に巡り合った。ジョギング、朝食を済ませ、自転車で市内のシネマに向かった。熱血プロレスドラマかと思ったが全く違っていた。しかし、凡評価が物足りなく思えるほどに心に刺さる作品である。
私の幼少期はプロレス全盛期だ。毎週金曜日は新日本プロレスの中継を欠かさず見ていた。アントニオ猪木と外人悪役レスラーとの闘いを夢中で観ていた。ロープに囲まれたリング、レスラーのぶつかり合い、華やかに繰り広げられる技、対戦相手の挑発ゼリフなどの「あるある」を懐かしく思った。
だがそんな華やかさの裏で、作品全編に貫かれているのは哀しみや無情さだ。その根源はストーリーを追うことでじっくりと伝わる。「自分が果たせなかった夢を息子たちで叶えさせる」という父親のエゴイズムだ。彼はけして家族を愛していない。兄弟に序列をつけたり、対戦相手をコイントスで決めたり。息子たちも、父親に洗脳されているから逃げられない。プロレスは人々を熱中させる。プロレスに憑りつかれ、プロレスにすべてを捧げ、身を滅ぼした家族の物語でもある。我が国では、野球でこういう家族が多いような気がする。(R6.4/6記)