映画『向田理髪店(2022)』

向田理髪店(2022)監督 森岡利行

家人を駅まで送った後、自転車で隣市のミニシアターへ向かう。結構評価の高い作品。思いのほか早く来れたので途中コンビニイートインでコーヒー休憩。のんびりしていたらあっという間に上映8分前、明らかに油断。飲みかけのコーヒーを捨て、ダッシュで劇場に向かった。

過疎化がテーマの物語である。寂れた町で理髪店を営む中年夫婦。そこに一人息子が帰ってくる。地域活性化の問題、そして映画撮影で町が一時盛り上がる。主演の高橋が存在感たっぷりで、一生懸命さが伝わり、いい味出していた。

どこにでもあるような平凡な映画。大きな心的振幅もなく物語が終わりかけていた。しかし、最後のワンカットを見たら、突然涙が噴き出した。アイドルの歌が終わるまで、エンドロールすべてを泣いていた。エンドロールはこのためにあるような気がした。何が感動したのか分からない。だが、一人の男の人生をすべて見たような、それに自分を重ね合わせたような気がした。こんなに泣いたのはいつ以来だろう。映画を観続けていると、こんな体験もするのだなあ。(R4.12/10記)