映画『破戒(2022)』

破戒(2022)  監督 前田和男

ずっと観たかった本作。隣市のミニシアターで上映されるのを待っていたが、その気配がないので、しびれを切らし都会の映画館に出向くことにした。電車で行ったが、上映開始まで意外に時間がなく、ハンバーガーを一つ買って鑑賞に臨んだ。全国水平社100周年の映画である。小説は読んだことがないが、とてもいい映画だった。

どこに住んでいるか、先祖が何であったかで差別される。そんな恥ずかしい歴史があったのだ。その悲惨さ、つらさ、不条理さは痛いほど伝わってくる。主人公の師の言葉が心に刺さった。「差別は人間の弱さから生まれる」と。そして「この差別がなくなっても、また新しい差別が生まれる」と。確かに、今の世にも差別はある。100年足らずでは人間は進歩しない、弱いままなのだ。

キャストはばっちりだ。若手俳優が、ド直球の演技で名作に挑んでいる。終始憂鬱な表情だが最後に笑顔を見せた間宮、深刻なストーリーの中で唯一希望の光だった矢本。そして、相手役は私が大好きな石井杏奈。彼女が出ると、劇が締まる。

社会から、世間からどんな差別を受けようと、信じあえる関係があればいい、そういう希望を持たせてくれました。交通費込みで普段より倍以上のお金を払って観たかいがありました。(R4.8/28記)