読書『信念をつらぬく』Ⅲ

筆者は、日本社会の問題点を書き出し、各界のキーパーソンに会い、議論を重ねてまとめたそうだ。

~一番の問題は日本人が働きすぎていることにある。日本は海外に比べて消費者運動が弱い。労働者の組合活動や一般の人々の政治活動も欧米のように盛り上がりません。また少子化が進み、将来の労働力不足が深刻な問題になっています。~

私も小さな教員組合の幹部をしているが、組合活動などまったく盛り上がらない。悲しいかな、わが組合員ですら長時間労働を選んでいる。要するに、国民性として働くのが好きなのだ。利他の精神や責任感が強く、勤勉や努力を好む。そうとしか思えない。

~根本的な原因は日本人の大半が夜遅くまで働いていて仕事以外のことに費やせる時間がほとんどないことにあるのではないか。~

仕事をすることが趣味であり、恋人であり、生きがいなのだ。もうそれは親から子へ、そして孫へと受け継がれてきたDNAなのだ。欧米では、仕事や労働は罰と同義である。たぶん宗教がからんでいるのだろう。

~日本では企業活動は突出して活発になるものの他のことがすべて疎かになりがちです。結局、企業ばかりが強くなり、消費者保護や環境保護、社会的弱者のための市民活動など、もっと社会全体で行うべき大事な活動が弱く、それらがすべて役所任せになっているのです。~

ワークライフバランス」という言葉があった。そもそもなぜワークとライフが二分されなければならないのか。なぜライフよりもワークが先に来ているのか。

~20年も前から声をあげていたのに労働時間短縮も少子化問題も目覚ましい進展はなく、あのとき、政府が長期的な視点から大胆に労働時間短縮や少子化対策を進めていれば、日本経済は現在のような悲惨な状態には追い込まれなかったのではと思わざるを得ません。~

きっと経済が好調だろうと低調だろうと、日本人は働きすぎる。豊かになるために働くのではなく、働くことそのものが豊かだという価値観なのだ。「働き方改革」も尻すぼみで終わった。「異次元の少子化対策」も大したことはないだろう。(R5.5/30記)