映画『1640日の家族(2021)』

1640日の家族(2021)LA VRAIE FAMILLE/THE FAMILLY 監督 ファビアン・ゴルゲール

台風接近のため、計画していた旅行をキャンセルした。ぽっかり空いたスケジュール。丸一日の雨模様、しかも3がつくサービスデー。絶好のミニシアター日和である。珍しくマイカーで現地に向かった。

この作品、とても素晴らしい。我が国ではあまりなじみのない里親制度を題材にした物語だ。我が子と同じように、里子を育てる。しかも4年半も。当然、情が移ってしまうだろう。その子への愛情があるゆえに、行き過ぎた判断もしてしまうのだ。里子を生みの親に返される里親の気持ちが演技から痛いほどに伝わってくる。が、それ以上に凄いのが里子の演技だ。いや、とても演技だとは思えない。

劇中、「商業主義の奴隷」という言葉が2度出てきた。子どもも言っていたから、その奴隷とならぬように両親が家庭内で警鐘をならしていたのだろう。商業主義がはびこることで家庭が危機を迎えるのだ。きっとその対極にあるものが、信仰なのだと読み取った。

別れのシーンはもちろん感動的だが、終盤、旦那が里子に話す言葉が心に刺さり、えぐられた。悲しいことがあったらどうするのか。きっとそれは私にもできるはず。日々を生きるということは、悲しみを乗り越える力を養うことでもあるのだ。(R4.9/23記)