映画『ミッドナイトスワン』

ミッドナイトスワン (2020)監督 内田英治

「この映画、まだやっているのか」と思っていたところ、日本アカデミー賞で本作品が数々の賞を総なめしたというニュース。私は彼の女装なんて観たくないな、と鑑賞を避けていたのだが、がぜん興味が高まった。地元での上映は今日が最後。私と同じような心境だったのだろう、劇場は結構埋まっていた。日本アカデミー賞効果でしょうか。

日本アカデミー賞にふさわしい映画です。作品そのものに力があり、多くの人を引き付ける内容です。主演男優もまさに「体を張った」演技をしており、これまたアカデミー賞にふさわしいでしょう。

私は『リリーのすべて』を思い出しましたが、それがスパイスになっているのでしょうか。劇中、ある人物が「悲しいね、朝になったら白鳥になってしまう」と言ったのが、妙に納得してしまうシーンがありました。性を乗り越えるという事象だけでもインパクトがあるのです。クライマックスは言わずもがなです。

私の職場ではようやく男女混合名簿になります。だが今の大人は性差、性別を習慣として、無意識的に叩き込まれているのです。そして、そうではないものを蔑み、忌み嫌うのです。それは私も含めてのことです。私も、社会も、大きく変わらねばならないし、それが子どもの前に立つ私の役割でもあるのです。

最後のチャンスを逃さなくてよかったとつくづく感じた作品です。