読書『 老いを照らす』Ⅳ

智慧について。

~仏教の究極の目的は智慧を身につけることです。~

智慧の第一は命の尊さの認識です。天にも地にも自分はただ一人。つまり人間の命というものはこの世に一つしかない。だから尊く大切にしなければならないのだ。人の命は一つ一つが尊く、失敗しようと成功しようともう一度作り直したりコピーしたりすることはできないんです。~

~「殺してはならぬ、殺させてはならぬ」という教えこそ、お釈迦様の教えの中で最も尊い、最も現代的な教えだと思います。~

だれかが著していた。学校教育などで聞かれる「命を大切に」という言葉がなんと回りくどいことか。なぜ「殺すな」「死ぬな」と言えないのか。たしかに「命を大切に」では、大切にするとはどういうことなのかが分からなければ伝わらないだろう。

智慧の第二は目に見えないものを大切に考えるということ。目に見えるものにだけ価値を認め、それを手に入れるお金だけが大事だという社会が出来上がってしまった。目に見えないものというのはまず神様や仏様ですね。一人一人の命、これも目に見えません。それから人間の心も見えません。~

どうして目に見えるモノだけに価値を認めるようになったのだろう。

日本は太平洋戦争に敗れ、すべてを失った。そこから高度経済成長をなしとげることができたのも、消費社会があったからだ。みなが豊かさを追い求め、様々なものを手に入れた。モノを買い集めることが幸せだったのだ。今、巷にはモノがあふれかえっている。部屋の中にも所狭しとモノが詰め込まれている。だが、幸せだなんて言えない。