読書『ファシリテーション革命 』(中野 民夫)

ファシリテーション革命 (岩波アクティブ新書)  – 2003/4/5中野 民夫 (著)

もうどれだけ前のことか。ファシリテーションという言葉が、少しだけ教育書の世界を賑わせた。私も1度だけセミナーに参加したことがある。当時、私は民間教育研究団体に所属していたのだが、また新しい言説が出たのかと、辟易した覚えがある。

心身を壊し、教育というもの自体に距離を置きたかったのだが、この本を手にしたのは、自分なりにこのような内容を気にかけていたのだろうな。

~個性を育み、多様な個性を尊重しながら、チームとしての力を発揮するような、引き出し、促進し、まとめていく「支援型」のリーダーシップが必要になっている。~

~「指導」から「支援」へ。「教える」から「引き出す」へ。「権威者」による上意下達から「一人ひとり」の力づけへ。ファシリテーションがもたらす変革は、いま世界のあちこちで求められ、始まっている。~

90年代末には、指導ではなく支援だ、という言葉が盛んに言われるようになった。新しい学力観云々、生活科、総合的な学習の出現が発端であろう。その方向転換は、教員の世界に少なからず混乱を招いた。

教科であれば「どのように」教えるかに絞って準備すればいい。しかし生活科、特に総合は、「何を」、「どのように」教えるかという問題が立ちはだかる。どんな単元を構想するのか。毎時間の内容はどうするのか。「何を」の段階からすでに教員は疲弊してしまう。そうして育んだ思考力、創造力が本当に役に立つのならまだわかる。しかし入試制度は相変わらず教科偏重だ。

今思うと、「指導」から「支援」へ、などのような言葉尻だけでは意味がなかったのだ。後付けのような改革ではなく、構造から変革しなければならなかったのだ。