読書『民主主義はいかにして劣化するか』(斎藤貴男)

民主主義はいかにして劣化するか (ベスト新書) – 2014/11/8斎藤 貴男 (著)

あれは2014年のことだったのだ。私は組合活動と民間教育研究サークル活動に没頭しており、世の中の動きなど二の次だった。しかし、安倍首相が「外国から日本に船に乗って帰る家族」の絵を見せながら何かを力説していた様子は覚えている。あれも、集団的自衛権の行使容認の正当性を訴えていたのだろう。

~もめごとの火種があっても話し合いで解決できる状況こそが「平和」なのだと考えますが、日本や米国の多国籍企業が世界中で好き勝手に行動して利益を上げられる状態が「平和」であって、それを阻害する要因は「平和」を乱すテロリズムだという解釈です。~

好き勝手に行動できることが平和、利益を上げられなければ平和ではないという考えになる。

集団的自衛権の行使容認とか憲法改正に反対する側は「戦前回帰」「軍国主義復活」という言い方をしてしまいがちですけど、要はビジネスのロジックでよく言えばスマートに「自由貿易体制からの利益を損なうものはテロリストで邪魔だからぶち殺す」という捉え方の方が真実に近い。~

私の記憶では我が国は太平洋戦争で多くの犠牲者を出し、そして周辺の国々も多大な迷惑をかけ、痛々しい敗戦の結果、「二度と戦争だけはしない」という意識になったのだと思っている。それにより、憲法の平和主義も受け入れられ、指示されたのだろう。

そこから時代は変わった。日本は高度経済成長期をむかえ繁栄を誇ったのだが、少子化による国力衰退、後進国の追い上げにより、経済大国でもなくなったのだ。いまや、金づるは多国籍企業にしかない。日本は、「平和主義」と引き換えに、経済大国を延命させるのか、それとも貧しくとも「平和主義」を貫くのか。

~日本を経済大国にしてくれているのは彼ら(多国籍企業)なのだから、その利益のためには軍事力のバックアップが必要~

わたしは、もう利益追求はしなくてもいいと思っているんだけど。